当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0142
「人」と「為」をくっつけたら「偽」になるから、「人の為」なんていったって、それはニセモノなんだ、という話を聞いたことがありますが、本当にそうなんですか?

A

「為」という字は、実にいろいろな意味を持っている漢字で、仕事で漢文を読まなければならないことがあったりしたとき、この字に出会うと、ちょっとイヤになるくらいです。しかし、私のような妙な職業に就いている人でなければ、この字を見てすぐに思い浮かぶのは、「ため」という意味でしょう。そういう方々をまったくもってうらやましく思う今日このごろであります。
それは置いておくとしまして、この漢字の一番基本的な意味は、「する」とか「つくる」という意味なのです。そこで、「偽」という字は、「人のため」という意味ではなくて、もともとは「人がする、人がつくる」という意味だということになります。つまり、本来は「自然のままではなく、人間の手が加わったもの」を表していたものが、やがて模造品、ニセモノの意味へと変化していったというわけです。
さて、以上に基づいてご質問を言い換えますと、「人」と「する」をくっつけたら「偽」になるから、「人がする」なんていったって、それはニセモノなんだ、となります。これは、意味がないわけではありませんが、ほとんどナンセンスに近い文ですよね。
というわけで、「人の為」にする行いは、所詮ツクリモノだ、なんてことは、漢字の世界では嘘っぱちです。安心して、世のため人のため、日々精進していっていただきたいと思います。

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