当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0093
麻雀の牌の中に、ハツ(発)というのがあるのですが、その漢字が、「癶」(はつがしら)に「弓」と「矢」を書いた形になっています。これはなんなのでしょうか?

A

まずは実地検分というわけで、十数年ぶりに雀荘へ乗り込もうかとも思ったのですが、なんせもともとヘボ麻雀。久々となれば、大敗を覚悟しなくてはなりません。それを考えると弱気になってしまい、今回は、実地検分はなしにしました。
まず、押さえておくべきことは、「発」の旧字体は「發」だということです。それがわかると、問題の漢字との差異は、「殳」と「矢」のみ、ということになります。
さて、いつものように『大漢和辞典』や角川書店の『書道大字典』、それに各種の異体字辞典を調べてみましたが、残念ながら、お問い合わせの字形は見あたりませんでした。しかし、この世界では名高い竹書房が運営する「麻雀博物館」のホームページで調べてみますと、たしかに、お問い合わせの字形は存在します。ホームページ上の写真なのではっきりとは確認できないのですが、国産麻雀牌第1号として文藝春秋が製作した「文春牌」のハツは、おそらく、その字形なのではなかと見てとれます。ただし、「發」の字形の麻雀牌も存在するので、この世界では必ず「矢」、といわけではないようです。
かくも格調高い麻雀牌に使われていたということは、無視できません。『書道大字典』によりますと、「殳」が「攵」(のぶん)になっている字形は、かなりの数が確認できます。「攵」と「矢」は、形が非常に似ていますから、おそらく、「發」の異体字として、「殳」の部分が「矢」になっている字形が存在することは、認めて差し支えないだろうと思います。
麻雀博物館のホームページでいろいろな牌を眺めていると、この字形以外にもいろいろな異体字が使われていることに気づきます。ただし、そんなことを気にして麻雀をやっていると、集中できなくて大負けしてしまいそうですから、気を付けてくださいね。

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア