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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0325
「挨拶」の「挨」と「拶」は、他にはどのような熟語に用いられる漢字なのですか?

A

「挨」という漢字は、もともとは「打つ」とか「押す」とかいった意味を持っています。一方の「拶」は、「近づく」「進む」という意味を持っています。そこで、「挨拶」は本来、「押して進む」「押して近づく」という意味の熟語だということになります。
それが、禅宗のお坊さんたちの間で、お互いの間で問答を繰り返すことを表す熟語として用いられるようになっていきます。お坊さん同士が出会ったとき、相手がどれくらい禅の知識を持っているのか、さぐりを入れながら「押して近づいて」いこう、というわけなのでしょう。
その意味からさらに転じて、人間同士が出会ったときに交わす受け答えという意味で、「挨拶」が使われるようになったようです。
「挨拶」はこのように、非常に特殊な経緯で成立した熟語ですから、現在では、本来の意味は忘れ去られています。そこで、「挨」も「拶」も、「挨拶」という形以外で用いられることは、少なくとも現代日本語の中では、ほとんどありません。ちょっと大きな漢和辞典を調べると、「挨」については「挨次」(アイジ。次から次へと押し合って進むこと)という熟語が載っていることがありますが、「拶」については、熟語はまず載っていないことの方がおおいでしょう。
いわば、「挨」も「拶」も「挨拶」専用の漢字なのです。

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