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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0305
「友」の字源を辞書で調べると、「右手を組み合わせたもの」となっていますが、最初の2画は左手の書き順なので、「左手と右手を組み合わせたもの」ではないでしょうか?

A

一般に、「左」と「右」の筆順は、以下のように、最初の2画の書き方が異なると言われています。
030501
そして、この違いは、字源によって説明されることが多いのです。図は、この2030502文字の篆文(てんぶん)ですが、現在使われている字形の最初の2画は、それぞれの赤い部分に相当します。ちょうど逆向きになっているのがわかりますよね。
「左」のこの部分は左手を、「右」のこの部分は右手を表しています。そこで、この違いが、筆順の違いに影響しているというのです。
さて、ご質問の「友」なのですが、ご指摘のとおり、この字の最初の2画は、「左」と同じように書くとされています。だとすると、この部分はもともと左手を表していたことになり、「右手を組み合わせたもの」という字源の説明はおかしいのではないか、というのがご質問の主旨で、まったくごもっとも、ということになります。
030503ところが残念なことに、「友」の篆文を調べてみると図のようになっていて、上の「左」「右」の篆文と比較すると、これは明らかに右手です。これはいったいどう説明すればよいのでしょうか。
結論から申し上げますと、「左」と「右」の筆順の違いを、字源に結びつけて説明するのは、とてもわかりやすいのですが、根拠がある話ではありません。筆順について定めた文部省著作『筆順の手引き』によれば、両者の違いは次のように説明されています。

横画が長く、左払いが短い字では、左払いをさきに書く。
例:右・有・布・希
横画が短く、左払いが長い字では、横画をさきに書く。
例:左・友・在・存・抜

つまり、文部省によれば、筆順の違いは長さの違いに起因するものなのです。
筆順とは、より美しく整った字を書くために、慣用上、工夫されてきたものです。字源と結びつけるのは、あくまで覚えるための方便だと理解しておいた方がよいでしょう。

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