当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0020
「サイトウ」さんや「サイキ」さんの「サイ」という字には、「斉」「斎」「齊」「齋」などいろいろな字がありますが、漢字としてはどう違うのですか?

A

ここに挙がった4つの漢字は、明確に2つのグループに分けられます。「斉」と「齊」は、音読みはセイ、訓読みすれば「ととのう」とか「ひとしい」とか読む漢字で、前者が新字体、後者は旧字体という関係にあります。それに対して、「斎」と「齋」もやはり前者が新字体、後者は旧字体という関係になるのですが、こちらの音読みはサイ、訓読みすれば「ものいみ」で、神仏を祭るときに体を浄めることを表す漢字です。
このように、この2つのグループの漢字は、もともと読みも意味も別なのですが、「斉」「齊」をサイと読んで「ものいみ」の意味に用いることは、古くからある用法のようです。おそらく「斎」「齋」の略字のような使われ方をしたのではないでしょうか。そこで「サイトウ」さんや「サイキ」さんの「サイ」にもこれらの字が使われるようになったわけです。
この2つのグループの漢字が全く別の字であることを意識していない人は多いようで、小社刊・紀田順一郎編『『大漢和辞典』を読む』には、女優の斉藤由貴さんがデビュー当時、よく「斎藤」と間違えられた、という話が載っています。事務所ではそのたびに「由貴ちゃんは斉藤です」と抗議していたそうですが、“「斉」と「斎」は間違えやすいので、全部「斎」に統一しています”なんていうとんでもないところもあったようで、事務所の方のご苦労がしのばれます。

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