当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0461
「あきらか」と読む漢字はたくさんあるのに、「明らか」以外はほとんど使われないのは、どうしてですか?

A

そんなにたくさんありますかねえ……。と思ってパソコンで「あきらか」と入力して変換キーを押してみて、びっくり仰天。図は、MS-IMEで出てきた変換候補ですが、こんなにたくさんあるんですねえ。
046101
でも、こうやって眺めてみても、どうもピンと来ない漢字ばかり。しかも「明らか」の送り仮名は「らか」なのに、この変換候補はほとんどが「か」。どうも、「あきら」と読む名前に使う漢字がずらずらっと出てきてしまった感じです。
とはいえ、「あきらか」と読み得る漢字が多いのは事実です。手ごろなところで小社『新漢語林』の音訓索引を調べてみると37字ありますし、ご存知『大漢和辞典』の字訓索引だと、な、な、なんと!199字もの漢字が並んでいます。
ただし、これらの「あきらか」の大群は、全部が全部、実際に使われていたというわけではなさそうです。たとえば、昭和14年に初版が刊行された、塩谷温(しおのや・おん)の『新字鑑』という漢和辞典には、付録として「同訓異義」を集めたページがあるのですが、その「あきらか」には、「灼」「明」「昭」「炳」「耿」「皎」「晶」「煥」の8文字が列挙されています。このあたりが、「あきらか」の現実的なリストではないでしょうか。
これらの「あきらか」には、それぞれ微妙な意味の違いがあるわけですが、『新字鑑』の「同訓異義」では、「明」について、「すべて「くらい」ことの反対で、「あきらか」の意に広く用いられる」と説明しています。
あんまり数が多いと、使い分けるのはたいへんです。そこで、最大公約数的に「明らか」を使っておこう!それが、現在では「明らか」以外はほとんと使われなくなった理由ではないでしょうか。
数が増えすぎるとかえって衰退を招きかねない。「あきらか」の大群は、なんだか、そんな生物学的な事実を語っているようにも思われてきますね。,

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