当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0524
植物のモチノキは、漢字で書くと「黐の木」だそうですが、この「黐」のなりたちを教えてください。

A

「黐」は音読みチ、訓読みでは「もち」と読む漢字です。この場合の「もち」とは、棒などの先にくっつけて、小鳥や昆虫などをつかまえるのに使う「とりもち」のことです。そこで、「黐」1字で「とりもち」と訓読みすることもあります。
この漢字は、「黍」部という部首に所属しています。「黍」は音読みショ、訓読みでは「きび」と読んで、穀物の一種を表す漢字です。ただし、この部首はとてもマイナーで、ふつうの漢和辞典だと、せいぜい5文字くらい載っていればいいところ。私たちが日常生活でお目にかかる可能性がある漢字としては、「黍」と「黐」の他には、明け方を意味する「黎明(れいめい)」の「黎」くらいでしょうか。
キビとは、桃太郎で有名なキビダンゴの原材料であることからもわかるように、ダンゴやモチとして用いられることがあります。そこで、「黍」を部首とする漢字には、弾力性があることを意味する漢字が集まっています。小社『大漢和辞典』でこの部首に所属する漢字は、さすがに52文字もありますが、その大半に「ねばる」という訓読みが与えられています。
「黐」もその1つ。この漢字の左半分の「黍」は、「ねばねばしている」ことを表しています。では、右半分はどうなのでしょうか?
この漢字は、音読みではチとかリとか読み、山に住むアヤシイ動物のことを意味していたと言われていますが、現在はほとんど使われることがありません。「離」の右半分にも使われているのですが、漢字の一部分になった場合、特定の意味を見いだすことはむずかしいようです。単純な形声文字と考え、「黐」の場合は音読みチを、「離」の場合は音読みリを表しているだけ、と理解しておくのがよさそうです。

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