当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0290
「卍」の筆順を教えてください。

A

来ましたね!この質問。これは、簡単なようで、ややこしい問題です。
公式に定められた筆順に関するきまりとしては、文部省著作『筆順の手びき』(1958年3月)があります。この本では、筆順の原則と、その具体例として、当時の教育漢字881字に関して筆順が示されています。
「卍」は、残念ながら当時の教育漢字ではありませんので、具体的な筆順は示されていません。そこで、原則を援用して筆順を決めなくてはなりません。この本で示されている原則には大きく2つあって、1つは「上から下へ」、もう1つは「左から右へ」という、きわめてシンプルなものです。
そこで、それに従って考えてみると、「卍」の筆順はたとえば次のようになりそうなものです。
029001ところが、これで話は解決とはまいりません。この筆順が正しいとすると「卍」の画数は4画ということになりますが、漢和辞典で調べてみると、この字の画数は6画になっているのです。「卍」を構成する直線の数は6本ですから、6画でこれを書こうとすると、たとえば次のような筆順になります。
029002でも、なんだか不自然ですよね。1画目と2画目など、ふつうに書けば絶対に1画で書くところです。
実は「卍」は、もともとは漢字ではないのです。インドで用いられていた記号の一種だと考えればいいでしょう。ところがこれが、「万」の代わりに中国でも用いられるようになって、漢字の仲間入りをしたのです。ついでながら、「卍」を「まんじ」と読むのは、「万字」が元になっているのです。
そんな事情ですから、「卍」には本来、部首がありません。それは、ひらがなに部首がないのと同じです。でもそれでは困るので、昔から漢字の字書では、「卍」の部首を「十」だとして扱っているのです。
漢和辞典でこの字が6画なのは、ここに原因があるようです。「卍」から「十」を除けば、4本の棒だけが残ります。そこで、部首である「十」の2画を加えて、6画だと数えるのです。
こんな事情ですから、「卍」の筆順を決めるのは、一筋縄ではいかないのです。でも、そもそも漢字ではなかったのですから、筆順などあんまり考えずに、適当に書いておいても許されるのではないでしょうか。

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア