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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0154
裁判所は「所」、警察署は「署」、この2つのショはどう違うのですか?

A

う~ん、今まで考えたことのなかったご質問ですねえ。
「署」の代表的な意味は、「署名」という熟語にあるように、「書き記す」という意味です。しかし調べてみますと、それ以外にも、ズバリ、役所という意味があることがわかりました。「署」の字の部首は、一番上にある「目」が横になった形をした部分(「よこめ」と言います)ですが、これは「网(あみがしら)」が変化したもので、もともとは網の象形文字なのです。「署」の字の役所という意味は、網のように区分けする、という所から生じて来ているようです。
「所」の方は、基本的には「ところ」の意味で、非常に使用頻度の高い漢字です。そのぶんだけ、特定のイメージを持たない字であるとも言えるでしょう。そこから考えますと、「所」と書くよりも「署」と書いた方が、役所というイメージが強く出るのではないでしょうか。警察署、消防署、労基署など、「署」の付くものを並べてみると、いかにもお役所然としているようにも思えてきます。
この印象が本当だとすると、裁判所が「所」なのはありがたいですね。お役所を相手に訴訟を起こしても、公平に裁いてくれそうな気がしてきます。もし「裁判署」だったら、確実に敗訴することでしょう。また、派出所が「所」なのも、警察署と違って市民生活に溶け込んでいるようにも思えて、親しみがわくように思えてきたのですが、いかがですか?

(注)その後、読者の方から、「署」には告発権があるが「所」にはない、というご指摘をいただきました。法律的な定めがあるのかどうか、裏は取れませんでしたが、現実としてはその通りになっているようです。

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